皆さん、選挙には行ったことがありますか?
国民、県民、市民の代表を決める大切な一大イベントです。
今回は、選挙事務について徹底的に解説していきます。
選挙前日
投票所の設営
選挙前日は、投票所の設営を行います。
顔合わせ的な意味もあるため、バイトの人も参加します。
だいたい午後に行われることが多く、1時間程度で終了します。
記載台や受付用の机、誘導用の張り紙などをセッティングするほか、翌日に向けて簡単な打ち合わせ(参集時間や服装など)を行います。
もちろん、この設営にかかった時間に対しても時給が発生します。
しかも、作業時間に関わらず、見なしで2時間分もらえることが多いです!
極端な例で言えば、ちょっと早めに来て設営を始めた人が定刻前に設営を終えてしまって、定刻に来た人は特に何もせずに、お金だけもらって帰るということもあります。
機器・備品の最終チェック
選挙管理委員会事務局の職員は、前日も選挙の準備に追われています。
当日に各投票所に配布する投票用紙や投票録、選挙人名簿などの備品の過不足がないか最終チェックし、翌日に備えます。
機器・備品
当日使用する機器や備品には以下のようなものがあります。
- 受付用パソコン:投票の受付処理を行うパソコン。
- 読み取りバーコードリーダー:入場整理券(整理券)に記載されているバーコードを読み取るための機器。
- 投票用紙:白紙の投票用紙。選挙人はこの紙に候補者の氏名を書いて投票する。
- 投票録:各投票所における投票の状況を記載する紙。投票管理者や投票立会人の氏名、代理投票の人数、投票人数など、その投票所特有の事項について記載する。
- 選挙人名簿:有権者の情報が掲載された名簿表。
- 予備の整理券:当日整理券を持ってこなかった人にその場で発行するための予備の整理券。
投票開始前(~7時)
選管本部
選挙管理員会(略して選管)本部の職員は6時前に参集します。
本部では投票開始前までに、投票結果集計システムやその周辺機器のチェック、当日の役割分担と業務内容の確認、要注意事項の伝達、ホームページの準備、選管委員長の挨拶などを行います。
これらはだいたい30分から45分くらいで終わるので、午前7時からの投票開始に備えます。
また、長丁場になるので、みんなでお金を出し合ってお菓子やジュースを買い出しに行きます。
本部職員の役割分担
本部職員の役割分担は、大まかに分けると以下のとおりです。
- 選管事務局職員:選管の専任職員で選挙のことを最も良く知っている人たちです。他の従事者からの相談・質問に答えたり、困難なトラブルへの対応方法を決定したり、その他諸々の事項を判断し決定します。
- 庶務担当:各投票所や有権者からの問い合わせや物品の搬入などに対応します。有権者の情報を閲覧できる市民課の職員などが担うことが多い役割です。
- システム担当:投票結果システムの管理や時間ごとの投票結果の出力などを担当します。情報システム課などの職員が担当します。
- 広報担当:投票状況のマスコミへの報告やホームページへの掲載などを行います。広報課などの職員が担当します。
投票所
投票所の従事者は6時ごろに、各投票所に参集します。
参集後は7時の投票開始に向けて、受付用機器のセッティングや張り紙の掲出などを行います。
準備が終わったら、選管本部同様にお菓子やジュースを買い出しに行きます。
7時になると同時に投票場の入り口を開き、投票者を中に案内します。
投票者は列を作っている場合もあります。
投票所職員の役割分担
投票所職員の役割分担は、大まかに分けると以下のとおりです。
- 主任:各投票所職員の責任者でありリーダーです。投票所従事経験のあるベテランが担当します。
- 副主任:主任を補佐するサブリーダーです。こちらもある程度経験のある人が担当します。
- 受付係:来所者から整理券を受け取ってシステムでチェックし、投票用紙を交付する係です。通常2人が担当しますが、全職員がローテーションで対応します。
- 庶務係:整理券の再発行、代理投票、来所者の誘導、選挙人の質問への対応、鉛筆の削り直し、投票用紙の補充など、受付係の業務以外のことはなんでもやります。
- 職務代理者:投票管理者に病気やケガなどの事故があり、職務を遂行できなくなった場合に備えて配置されます。職員が担当しますが、職務代理者になると他の業務は一切行うことができないので、何もなければ超絶暇です。
投票開始~投票終了(7時~20時)
選管本部
投票が開始したからと言って選管本部で何かやることが発生するわけではありません。
ただし、投票が開始すると有権者や各投票所からの問い合わせが増えるので、やや忙しくなります。
よくある問い合わせと回答
- 指定された場所と違う投票所に行ってしまった ⇒ 指定の投票所でないと投票できません。
- 整理券を紛失してしまった ⇒ 整理券がなくても投票できますので、投票所の職員にお申し出ください。
- 投票時間に少し遅れそうだが待ってもらえるか ⇒ 時間厳守ですので、待つことはできません。
- 投票用紙に記入できないが投票できるのか ⇒ 意思表示をしてもらえれば、投票所の職員が代理投票します。
たまにある問い合わせと回答
- 誰に投票すればいいか ⇒ 自分で考えてください。
- 本人が障害者で意思表示ができないので、付き添いが代わりに投票してもよいか ⇒ 意思表示ができない以上、本人の意思=付き添いの意思とは確認できないので、投票できません。
- ネット選挙はまだか ⇒ 画面を操作している人が本当に有権者かどうか確認できないので、当面無理でしょう。
投票数の報告・公開
決められた時間(投票開始から1時間ごと)になると、各投票所からその時点での投票数が報告されます。
なかなか報告してこない投票所には、こちらから電話をかけて報告の催促をします。
全投票所から投票数が出揃ったらシステムで集計し、その結果を紙に印刷して都道府県の選管にFAXで送信します。
また、このとき同時に同じ紙をマスコミにFAXしたり、ホームページで公開したりします。
開票所の設営
選管本部の職員は、手が空いているときに少しずつ開票所の設営をしていきます。
開票所には、投票用紙を広げるための机や、作業者のための椅子、票読み取り機の設置、開票立会人やマスコミ用の机や椅子が必要なので、それを少しずつ整えていきます。
投票所
投票箱の確認
投票が開始すると、まず最初に投票箱の確認をします。
投票箱の確認は、投票所の職員と一番最初に投票所に来た投票者で行います。
まずは投票者の前で職員が投票箱を開封します。
そして、投票者に箱の中が空であることを確認し、職員が箱を閉じて施錠します。
最後に、確認に協力してもらった投票者に、投票録に署名をしてもらって終了します。
投票用紙の交付
投票箱の確認が終了すると、投票用紙の交付を開始します。
流れは以下のとおりです。
- 受付係が整理券を来所者から受け取ります。
- 整理券に示されているバーコードを専用の読み取り機で読み取り、投票者の基本情報(氏名・性別・生年月日など)を確認し、氏名を読み上げます。
- 読み上げた氏名に対して相手が肯定の返事をしたら、システムで受付の処理をします。相手が間違った投票所に来ていたりしたら、システムがエラーを返します。
- システムが無事受付を完了したら、投票用紙を交付します。
整理券を持ってこなかった場合の手続き
たまに整理券を持ってこない来所者もいます。
その場合は、以下のような手順を踏むことで投票できるようになります。
- 受付係が来所者を庶務係のもとに案内します。
- 庶務係が来所者から個人情報を聞き取り(注)、選挙人名簿と照らし合わせます。
(注)投票所によっては、身分証明書を提示してもらう場合もあります。 - 来所者が選挙人名簿に登録されていたら、手書きの整理券を来所者に発行します。
- 来所者は再度受付に行って手書きの整理券を渡し、投票用紙の交付をしてもらいます。
投票用紙の記載・投票
投票用紙の交付を受けた投票人は、指定された記載台に行き、そこに置いてある鉛筆を使って、投票用紙に投票する立候補者の氏名(比例代表の場合は政党名も可)を記載します。
記載台には、立候補者の一覧が掲載されているので、それを見ながら書くことができます。
氏名を書き終わったら、投票箱に投票用紙を入れます。
このとき、自分の子どもなどに投票用紙を入れさせるのは禁止です(職員に見つかると注意されます)。
必ず選挙人本人が記載も投票もすべて行う必要があります。
投票が終了したら、決められた出口から退室します。
自分で記入・投票できない人への対応
障害やケガなどで自分で投票用紙を記載し投票できない人に対しては、「代理投票」という制度があります。
投票人が代理投票を要望した場合、投票所の職員(庶務係の場合が多い)2名が付き添います。
投票人は、口頭や指差しなどで立候補者を示し、職員が代わりに記載します(もう1人は監視)。
記載した投票用紙を投票人に確認してもらいOKがもらえたら、投票人の目の前で職員が投票箱に投票します。
投票数の報告
各投票所は、決められた時間が来たら、その時点での投票数を本部に報告します。
各投票所のシステムで投票数を確認し、本部から提供された携帯電話を用いてその数を入力していきます。
忘れていると、本部から連絡が来てしまうので、急いで報告しなければなりません。
投票立会人の役割
投票箱のそばには、椅子に座って何もせずにいる人たちがいます。
この人たちは「投票立会人」といって、選挙が正当に行われているかどうかを監視する役割を持っています。
監視といっても、投票人一人ひとりの動きを常に監視しているわけではなく、法律で決めっているため半ば形式的に置かれているだけです。
ただ座っているだけで本当にやることがないため、ものすごく眠いそうです。
かといって眠っていたり談笑していたりすると、来所者から苦情が入ったりすることがあるので、そうならないように気を付けなければなりません。
お金はある程度支払われますが、暇すぎてものすごく苦痛な役割です。
投票立会人は、地域の住民から選出されます。
投票中(休憩時間)
選挙事務は長丁場に及ぶため、ミスを防ぐためにも適宜休憩をとることが推奨されています。
本部と投票所で休憩の取り方に若干の違いがあります。
選管本部
選管本部の職員は随時仕事があるので、合間合間を見て少しずつ休憩していきます。
庶務担当はいつ問い合わせが入るか分からないので、基本的に席にいて、対応していない時に休みます。問い合わせが多いとあまり休めませんが、全くない場合もありますので、その場合は常に休みという感じです。
その他の担当は時間ごとの業務なので、作業が終わったら人目のつかない場所で休憩、終わったら休憩の繰り返しです。
投票所
投票所の業務は役割のローテーションとなっています。
例えば、「受付係⇒庶務係⇒休憩」などといった感じです。
この場合だと、2時間働いて1時間休憩となりますが、バイトが多く全体の従事者が過多気味になっている場合、1時間働いて1時間休憩となる場合もあります(場合によっては1時間働いて2時間休憩の場合もあります)。
ちなみに休憩時間も時給計算に加算されているので、後者になればかなりおいしいです。
人目のつかないところに休憩室が設けられているので、そちらにみんな集まります。
弁当の支給
10時ごろと17時ごろになると、本部と投票所の職員には弁当(800円~1,000円相当)が支給されます。
業者が配達しに来るので、それを受け取って各自休憩時間に食べるといった感じです。
時間が来ると業者が弁当箱を回収しにくるので、それまでに食べ終わるようにします。
投票終了後~開票開始前(20時~21時)
選管本部
各投票所が投票所を片付けた後に、投票録や点字投票の用紙、整理券などを本部に持参します。
本部ではその枚数をチェックし、システムの数と突合し最終的な投票数の確定を行います。
また、不在者投票や期日前投票の合算もこの時点で行います。
これがなかなか大変で、システム上の投票数と整理券の数が合わなかったりすると全部数え直しとなります。
確定後は、最終的な投票結果を都道府県の選管本部に報告するとともに、マスコミへの送付、ホームページの更新などを行います。確定する頃には、21時を回っていることがほとんどです。
投票結果の確定に携わる職員以外は、20時45分ごろまでには開票所へ向かいます。
このタイミングで従事を終える職員もいます。
投票所
20時になると同時に投票所の入り口を封鎖します。
1秒でも遅れれば投票できなくなります。
最後の投票者が投票を済ませたら、本部へ投票結果の報告を行います。
投票結果の報告が完了したら、張り紙などを撤去し、投票録や整理券をカバンに詰めて副主任が本部に向かいます。
それとは別に、投票箱に関しては警察同伴のもと主任が開票所に届けます。
本部にて投票録や整理券の確認が終了したら、開票事務にも従事する職員は21時までに開票所に向かい、投票事務だけの職員はそこで従事を終了し、帰宅となります。
撤収担当
投票所の片づけが完了すると、本部から撤収担当が各投票所に派遣されます。
撤収担当は、記載台や看板などの大きな備品を回収し、本部に運びます。
撤収担当は、選挙人との接触がなく精神的に楽ですが、従事時間が短いため、他の役割に比べると報酬は低くなっています。
開票作業(21時~だいたい24時)
1.投票箱の開封
選挙管理委員長のもと開票作業の開始が宣言されると、投票箱を開封し、投票用紙(票)が大きな机の上に広げられます。
2.投票用紙の整理
票をある程度の束にして輪ゴムで止めてまとめていきます。
ある程度束がたまってきたら、読み取り分類機の担当に渡します。
3.票の読み取り分類
票の束を読み取り分類機に入れると、記載された文字をAIで判別し、自動で候補者別に票を仕分けてくれます。
4.票の確認
読み取り分類機でもたまに仕分けミスをすることがあります。
そのため、もう一度人間の目でしっかり仕分けられているかを確認します。
ここで、記載内容に不備がある可能性のある票は「疑問票」といって、疑問票担当による協議に回されます。
5.疑問票の解決
票の中には、書かれている内容に不備があるもの(疑問票)もあります。
以下の基準に従って疑問票を解決していきます。
無効票となる場合
- 白票(何も書かれていない票)
- 候補者名の他に余計なことが書かれている票(イラストや「田中太郎さん頑張ってください!」 など)
- 複数名の候補者が書かれている票
- どの候補者なのかが全く推定できない名前が書かれている票(候補者が田中太郎と佐藤次郎しかいないのに、「鈴木三郎」と書いてある など)
- 候補者名以外のことが書かれている票(「ロクな奴がいない」 など)
- 比例代表選挙以外の投票用紙に政党名が書かれている場合
有効票となる場合
- 軽微な誤字のある票(田中太郎を「田中太朗」と書いてしまう など)
- 仮名づかいが候補者の届け出上の表記と異なっている票(田中太郎を「田中たろう」と書く など)
- 誤字の程度が大きいが、疑問票担当全員の協議により有効と認められた票
按分票となる場合
- 記載不足で、複数の候補者への票と考えられるもの(「田中」とだけ書かれていて、候補者に田中が付く人が複数いる場合 など)
- 複数の候補者名の一部を組み合わせた氏名の記載がある票(候補者に田中太郎と佐藤次郎がいる場合に、「田中次郎」と書いてある場合 など)
按分票とは、特定の候補者1人の票にカウントされるのではなく、複数の候補者に配分されてカウントされる票のことです。
ただし、2人に配分されるから0.5票ずつ、3人の場合は0.33票ずつというような単純な計算方法にはなりません。
按分票は、按分票以外の獲得票数の割合に応じて配分されます。
例えば、按分票を除いた獲得票数が、田中太郎が200票、佐藤次郎が100票だった場合、獲得票数の割合は2:1なので、按分票もこの割合で配分されます。
よって按分票が6票あった場合は、これを2:1に分けて、田中太郎に4票、佐藤次郎に2票入ります。
6.計数
仕分けが完了した票は、計数機でぴったり100枚ごとの束に分けられます。
7.票の最終確認
計数後の束がある程度たまったら、開票管理者と開票立会人(合わせて10人前後)のもとに運ばれ、他の候補者が混同していないかどうかを目視でチェックします。
ちなみに、開票作業の完了スピードは、この最終確認の速さで決定する(ボトルネックとなる)ことがほとんどであるため、基本的に職員の努力でどうにかなるものではありません。
じっくり確認する人が多いと、どんなにそれ以前の作業を早く終えても、ここで詰まってしまいます。
8.システム入力
開票管理者のチェックが済んだ票は、候補者名と獲得票数が開票システムに入力されます。
システムからは、その時点での開票結果が出力されます。
出力結果は、都道府県の選管やマスコミへのFAX、ホームページへの掲載を行います。
この報告・公開作業は、だいたい30分または1時間に1回行います。
9.処理票の保管
処理が全て完了した票は、大きなテーブルの上に候補者別に積み上げられます。
得票数の多い候補者は票がどんどん積みあがっていくので、遠目からでもある程度開票状況が分かります。
10.開票の完了
全ての票の処理が完了すると、選挙管理委員長から開票完了の宣言が出されます。
宣言が出されたら、都道府県の選管やマスコミに開票確定結果をFAXし、ホームページに掲載します。
従事者の途中帰宅
開票作業の従事者は、全員が開票完了まで残っているわけではありません。
バイトや自宅が遠い職員は途中で従事を終了し、帰宅します。
ただし、選管事務局の職員やシステム担当者などは家が遠かろうが終電がなくなろうが、途中で帰ることができません。
開票完了後
開票が完了するころには、24時近くになっています。
途中で票数が合わないなどのトラブルがある場合はそれ以上かかることも珍しくありません。
開票が完了したら、机や椅子、機器の片づけなどを行います。
ある程度片付いたらさっさと切り上げて、電車があれば電車で、なければタクシーや自家用車で帰宅します。
多くの職員は翌日も通常の業務が待っているので、疲労などで支障が出る場合が多いです。
特に予定がなく、休める職員は休んだりします。
報酬額
選挙事務従事者の報酬は自治体職員の場合、だいたい2,000円~3,000円に設定されていることが多いそうです。
これは、管理職未満(一般職)の職員の平均時給から算出された額で、1回の選挙で5万円以上となることも珍しくありません(選挙事務の従事者は一般職が行います)。
対してバイトの時給は地域にもよりますが、1,000円~1,200円程度となっているみたいです。
学生やリタイヤした高齢者の方にとっては、割のいいバイトだと思います。
まとめ
いかがだったでしょうか?
選挙従事者は朝から晩まで拘束されるため、かなり疲れがたまります。
そんな状態で開票作業をすればミスをしそうなものですが、そうならないようにうまくシステムができています。
通常のバイトや勤務に比べると金銭的な旨味は多いですが、疲労がたまるので、あまりやりたがる人がいないというのが現状です。
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