皆さん、特別定額給付金はもう振り込まれましたか?
私は1週間くらい前に申請書が届いたので、翌日郵送で提出しましたが、当然まだ振り込まれていません。
そこで今回は、現在自治体で行われている、特別定額給付金の作業について、時系列順にまとめてみました。
自治体の補正予算の決定
特別定額給付金に関する国の補正予算が可決した後は、各自治体においても、給付金に関する予算を編成する必要があります。
国の予算は飽くまで、国から自治体へ給付金事務に関する費用を交付するためのものに過ぎないので、自治体から各市民へ給付金を支給するには、別途自治体の予算を組む必要があります。
このような緊急の場合、自治体が補正予算を組むには「長による専決」と「臨時議会による議決」の2通りがあります。
長による専決は、簡単に言ってしまえば自治体の首長(区市町村長)が独断で予算を編成するというものです。
首長がやると言った瞬間に決定するので、最も迅速に事務が進みます。
臨時議会による議決の場合は、地方議会(区市町村議会)を開き、そこで討論を経たのち、多数決による議決を行った上で、予算を決定します。
会議の招集の調整、討論、議決という3ステップを経るので、専決に比べると時間がかかります。
専決であれば国の議決の当日か翌日、臨時議会の場合はその1週間後~10日後くらいの時間を要します。
議会が「俺たちを無視して決めるな!」とか戯言を言わなければ専決で行けるのですが、自分たちの存在価値を守ろうとする議員が多いと、臨時議会を開かざるを得ません。
緊急時においては、議員は基本的には足手まといです。
末端の手足にすらなれずに、外野からガヤを入れることしかできないのですから・・・
担当部署の決定
ここが一番揉めるところです。
給付金の事務は膨大であるため、どの部署も決してやりたがることはありません。
候補としては、何でも屋の総務課、市民の生活に密接に関係している福祉課などが挙げられます。
場合によっては、お金を扱うということで、財政課や企画課が担うこともあります。
これは自治体によってまちまちで、部署間の力関係などで決まります。
当然、一つの部署で対処できる業務ではないため、他部署から応援職員を呼ぶのですが、みんなやりたがらないので、人員調達にかなり苦慮します。
自主的に集まることはなかなかないので、各部署で強制的に応援職員の人数を割り当てる運用をしていることが多いです。
要配慮者の扱いの決定
おそらく多くの自治体で申請開始が遅れたのは、この作業のためではないでしょうか
この作業には、給付金の担当部署だけでなく、福祉部門や女性支援部門などとの調整が必要で、「じゃあこの場合は?」「この場合は加害者に二重給付されてしまうよね?」などといった緻密な議論が交わされます。
DVなどで避難している人への給付方法については、総務省が自治体に丸投げに近い形になっているため(大まかな方針は示していますが)、申請の受付方法や加害者・被害者への対応方法など細かいことは、自治体側ですべて決める必要があります。
この調整が非常にデリケートで議論を要するため、多くの時間を割かれることになります。
確かに配慮が必要なのは分かるのですが、ごく一部の家庭の事情によって国民全体への給付スピードが遅くなってしまっているというのは事実です。
オンライン申請の開始
要配慮者への対応方法を含め、例外的な処理が必要な事項についてある程度対応方法が決定したら、まずは、オンライン申請の準備です。
といっても自治体側でやることは少なく、申請と受理が正しくできているかの確認が主になります。
どちらかと言うと、作業というよりも、システム業者との調整が大変です。
給付金業務に対応できるシステム業者は、自治体間で奪い合いが起きています。
うまくいけばすんなり開始できるのですが、うまくいかなかった場合はその原因を突き止めないといけないので、相応の時間がかかります。
不備がないことが確認できれば、総務省に報告し、マイナポータルから自分の自治体を選べるようにしてもらいます。
総務省のシステム自体に不備があることも多いので、そういった場合は原因の究明までにかなりの時間がかかります。
料金受取人払いの手続き
申請書を返送するための封筒には切手は必要ありません。
なぜなら料金受取人払いの扱いとなっているので、そのままポストに投函するだけで、自治体の費用負担で郵送することができます。
この手続きをするために、自治体側では郵便局に申請して、承認番号を取得します。
番号の取得のためには、料金受取人払いの適用期間の設定や、番号を印字する媒体の見本などの提出などを行う必要があります。
通常は承認まで2週間程度かかりますが、給付金の封筒については、郵便局も最優先で対応するため、1週間程度で承認を得ることができます。
承認が得られたら、承認番号を返信用封筒に記載します。
申請書と封筒の印刷
申請書と封筒の様式が決定したら、データを渡して業者に印刷を発注します。
システム業者と同様に自治体間で取り合いをしているので、印刷業者を確保するのはなかなか難しく、ここが最大の難関になります。
申請書も封筒も様式はシンプルなので、印刷自体はすぐに済みます。
印刷が済んだ申請書と封筒は自治体に納品され、不備がないかどうか検品を受けます。
申請書への印字
申請書が納品されたら、そこに発送先の世帯主の氏名・住所の印字を行います。
この印字部分が窓空き封筒の空き部分にフィットし、郵送の際のあて先となります。
世帯主の情報は、住民基本台帳から世帯主のデータを引っ張ってきて、庁舎内の大量印刷機で印字します。
ただし、自治体によってはシステム会社に住民基本台帳のデータを渡して、その業者に申請書の印字も含めて、封筒もろとも印刷してもらっているところもあるようです。
というか効率性の面から考えればそういう自治体の方が多いと思います。
個人情報の取り扱い方法がどうなっているかは知りませんが。
申請書の発送
申請書と封筒が準備できたら、全数を郵便局に取りに来てもらい、発送を依頼します。
通常、郵便は翌日までには届くのですが、膨大な通数なので、全ての世帯に届き切るのは2日程要するみたいです。
これだけ数があると、封筒が途中で開いてしまったり、紛失して届かなくなってしまったりということも何件かあるそうです。
ちなみに、申請書が届かない場合は、再発行届という書類を提出する必要があります。
この届を出すと申請書が再送されます。
申請内容のチェック
オンライン申請、郵送申請ともに職員による目視で記載内容をチェックします。
ちなみにオンラインの場合も、帳票を印刷して、郵送と同様に、紙媒体でチェックしていきます。
オンラインとはいったい何だったのか?・・・という感じですね
まずは、入力内容と住民基本台帳の情報と照合します。
申請者が住基上で確認できたら、口座の入力内容と添付の通帳やキャッシュカードの画像を見比べて、一致するかどうか調べます。
口座情報は少しでも間違っていると正しく振り込みがされないので、慎重にチェックします。
そして、口座情報をシステムに手打ちで入力していきます。
手書き文字を読み取って、AIで文字判別をする「AI-OCR」が使えればいいのですが、字が汚くて目視でも判別困難な場合もあるので、結局は目視に頼ることになります。
ちなみにオンライン申請であっても、目視によるチェックは紙で行った方が正確なので、一旦全部印刷するというアナログ仕様です。
申請不備への対応
必要事項が記載されていない、通帳の写しに書かれた口座情報と記入された口座情報が違う、添付書類が不十分などといった不備のある申請書が届いた場合は、その内容を知らせる通知を申請者に送ります。
通知が届いた申請者は、再度不備のある箇所を訂正して申請書を再提出します。
通知書に不備があると、自治体にもよりますが、正しく提出できたときに比べておおよそ3週間くらいは振り込みが遅くなります。
支給決定通知の送付
申請書の審査が完了した人に対しては、支給決定通知書という書類を郵送します。
通知書には支払予定日が記載されています。
支払いは支給決定通知書の約1週間後にされますが、支払処理の都合によっては、通知書が届くとほぼ同時に振り込まれることもあります。
これは、自治体の契約している金融機関が、まとめて振り込み処理をする日が決まっているからです。
例えば、14日~21日に処理したものを22日に振り込むとすると、14日の人は決定書が翌日の15日に届き、1週間後の22日に振り込まれますが、21日の人は通知書が22日に届くと同時に振り込まれることになります。
給付金の振り込み
給付金の振り込みは、一定期間の申請分を一括して振り込む「バッチ処理」で行います。
自治体側から専属契約している金融機関に振り込みの依頼をし、金融機関の職員が振り込みの作業を行います。
振り込み先については、給付金システムから出力したデータを電子媒体(CDやDVDなど)に入れて金融機関に手渡しする方法と、給付金システム自体を金融機関のシステムと紐づける方法とがあるようです。
ただし、急ごしらえでシステムを構築するのはやや困難だと思われるので、前者で運用している自治体が多いように思います。
まとめ
とにかく給付金業務では、住民の口座情報を把握することが最も大切です。
住民の基本情報はすべて自治体側も把握していますが、口座情報までは分かりません。
「ただ金を振り込むだけなのに何でそんなに時間がかかるの?」と思われる人もいると思いますが、全世帯の口座情報を収集するのに時間がかかっているのです。
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