新型コロナウイルスの猛威が全国を襲っています。
東京都では過去最大の感染者数を更新し続け、今まで感染者数がいなかった都道府県でも発見されるようになっています。
そんな中、自治体では新型コロナウイルスの対応に追われていますが、企業支援、情報発信、感染拡大対策など、どれも遅々としています。
なぜ、自治体のコロナ対策が遅いのか考えてみました。
理由1:首長が政治家だから
さまざまな理由があるのですが、これが最も本質だと思います。
感染症対策は、その道のプロとまでは言わないまでも、ある程度知識のある人が対応すべき問題です。
しかし、自治体の首長は政治家です。
政治家は、政治のプロなので、パフォーマンスは得意ですが、対ウイルスとなると今までの知識や経験が全く活きません。
その結果どうなるかというと、有効的な施策を考えたり、情報を迅速に発信したりするよりも、世間体を考えた対応をとるようになってしまいます。
端的に情報を発信すれば10分で済むはずが、飾り言葉や細かいニュアンスの違いなどをじっくり考えてから公表するため、3時間くらいかかってしまうこともあります。
ですが、そんな細かい部分を気にする人は住民の中には1人もいません。
よく、自治体ホームページに「市長メッセージ」などが掲載されていたりしますが、まさにあれが典型例です。
単なる情報提供であればメッセージ形式にする必要など全くありません。
あれは完全なパフォーマンスです。
理由2:組織が縦割りで硬直化しているから
新型コロナウイルス感染症が拡大すると、忙しくなる部署と暇になる部署に分かれます。
忙しくなる部署としては、対策本部の中核となる保健課や防災課、企業支援を行う商業観光課、情報発信を担う広報課、テレワーク対応の情報システム課、庁舎のウイルス対策管理を行う総務課などが挙げられます。
対して、暇になる部署としては、イベントの企画が中心の生涯学習課や平和人権課、来庁者が減少する市民課や保険年金課、閉館となる図書館や公民館、児童館などが挙げられます。
普通に考えれば、暇な部署から忙しい部署に人員を割り当てるべきですが、行政は完全な縦割りとなっているためそうそう簡単にはいきません。
暇な部署の担当課の課長は、「コロナが収束したら忙しくなるから」などと意味不明な理由で、部下を応援に出すことを渋ります。
結果として、忙しい部署の職員への負担が過大になり、業務の遂行スピードや質が低下します。
また、情報を横断的にやり取りしないため、ある部署の行っている対策の方針と、他部署で行っている対策が矛盾することもあります。
例を挙げると、商業系の部署は商店街のダメージを少しでも抑えるために、少人数や家族での外食であれば問題ないと情報発信をするが、保健系の部署は、人数に関わらず不要不急の外出自体を自粛するよう呼びかけるといった感じです。
これもトップ(首長)がパフォーマンス重視だと前者が、そうでなければ後者が正解になったりするので、非常に厄介です。
理由3:逆ピラミッド構造になるから
緊急事態であっても硬直化した縦割り組織のため、末端で働く職員の数は変わりません。
しかし、意思決定者は倍増します。
なぜなら、重要事項を決定するには、関連しない部署の管理職も含めた「庁議」を行う必要があるからです。
平時であれば関わらない部課長であっても、庁議で強制的に参集するため、そこでは自らの意見を述べることが多いです。
管理職がみんな自分の意見を述べる会議。
まさに超絶カオス状態です。
建設的な議論などほとんどされず、空想に空想を重ねた討論ばかりが繰り返されます。
枝葉末節の部分で盛り上がり、住民ではなく、議員を意識した言動ばかりが飛び交います。
最終的に何も決まらず、何をどうするかは末端の職員に任されるという結末を迎えます。
ここで悲劇なのですが、末端の職員が頑張って絞り出した案を否定する管理職が現れます。
そして複雑なのが、案に賛同する管理職もいるということです。
意思決定する管理職が1人であれば、その管理職の意見によって物事を進めていくことができますが、複数人いた場合はまた前述のようなカオスな議論に発展します。
まさに悪夢の無限ループです。
ある程度意見がまとまって、ようやく末端の職員が作業に取り掛かったとしても、今度は別の管理職が意見を述べにやってきて、作業がストップし再度協議が発生となることもあります。
いつになったら作業ができるんだ・・・という感じです。
「船頭多くして船山に登る」ということわざの典型例といっても過言ではありません。
理由4:英断を避ける風潮があるから
役所内で感染者が発生した場合は、近辺の職員もすべて濃厚接触者になるため、保健所から自宅待機の要請が出されます。
つまり、ある部署で1人の感染者が発生したら、その部署の職員は全員出勤停止となります。
そこで重要となってくるのがテレワークです。
テレワークとは、自宅で業務を実施するという取り組みのことです。
課員を複数に分割し、テレワーク従事者と出勤者で完全に分けることで、全滅を防ぐことができます。
例えば、課員A・B・C・Dがいたとして、第一週目はA・BがテレワークでC・Dが出勤、翌週はA・Bが出勤でC・Dがテレワークとして運用すれば、Aが感染しても自宅待機はBだけとなり、残ったC・Dが業務を継続することができます。
コロナによる全滅を防ぐためには、テレワークは重要なのですが、ここでその実施を妨害する部署があります。
それが職員課や情報システム課です。
職員課は職務専念義務を頑なに守らせようとして、情報システム課はセキュリティを理由としてテレワークの際に厳しい条件を課します。
職員課の場合は、テレワーク前に何を自宅でやるのか計画書を作らせたり、テレワーク中に本当に働いているかどうかを確認するためだけに職場から電話をかけたり、業務終了後に報告書を書かせたりと、明らかにテレワークする意欲を削ぐような取り組みを実施します。
情報システム課は、テレワーク従事者の自宅のパソコンのOSやウイルス対策ソフトのバージョンなどを確認し、条件を満たしていなければ却下したりと、そもそもテレワーク対象者を減らすようなことをしでかしてきます。
「職場の全滅を避ける」ということが第一目的ということをまるで分っていません。
多少のリスクをとってでも英断すべきなのに、それができません。
なぜなら自治体職員は減点主義だからです。
情報漏洩が起これば、情報システム課がその責任の一部を負いますが、そもそもテレワークを認めなければ責任問題に発展しません。
職員課に至っては責任問題すら生じません。単純に間違った方向に意識が高いだけです。
こういうのを「無能な働き者」と呼ぶのでしょう。
理由5:議員のことを気にしすぎるから
重要かつ迅速に公表すべき情報を掴んだとしても、それをすぐ世間一般に公表するわけにはいきません。
なぜなら、まずは議員に報告しなければならないからです。
では、なぜまず議員に報告しなければならないのでしょう。
理由は簡単です。
「議員が怒るから」です。
もはや意味が分かりません。
世間より情報の入手が一瞬遅れてもどうでもいいと思うのですが、議員の先生方はそうは思っていないらしいです。
まず第一報は自分たち議員に入らないと気に食わないらしいです。
専門家でもなく、情報が入ったからと言って有効な対策を思いつくわけでもないオジサン・オバサンたちに真っ先に情報を与えてなんの意味があるのでしょうか?
意味はあるにしても、世間への公表を遅らせてまでするほどのものではないのは自明です。
ちなみに、議員に連絡しようと思って電話をかけても、必ず出るとは限りません。
出ろよ。
最後に
コロナのような非常事態の際は、政治の力は邪魔になるだけな気がします。
優秀な官僚だけで考えれば、和牛商品券のようなふざけた案は出てこないはずです。
きっと急成長ベンチャーの経営者が指揮をとっていれば、もっと効果的な施策をとることができると思います。
何度も言いますが、未曾有の事態に、過去の経験や知識は対してアテになりません。
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