国・都道府県・区市町村、毎年さまざまな選挙が実施されますが、そのすべてが滞りなく行われているわけではありません。
今回は、いままで全国各地で起こった選挙事務のミスや不正について調べてみました。
選挙公報の印刷ミス
北海道の事例
北海道は、2013年7月の参院選において、道内281万世帯に配布予定であった選挙公報をすべて刷り直しました。
新たに発生した印刷費などは4千万円にも上ったそうです。
東京都の事例
東京都は、2010年7月の参院選において、候補者の希望した原稿を掲載し忘れるミスにより、一部地域へ200万部を刷りなおしました。
新たにかかった費用は930万円とのことです。
職員の遅刻
尼崎市(兵庫県)の事例
尼崎市は、2016年7月10日の参院選で、投票所の投票管理者となっていた福祉課長が寝坊で遅刻し、投票開始が10分程度遅れました(課長は15分遅刻)。
午前7時の投票開始を待っていた有権者25人のうち7、8人が投票せずに帰ったそうです。
課長はその後、戒告の懲戒処分を受けました。
岐阜市(岐阜市)の事例
岐阜市は、2012年12月16日の衆院選で、投票用紙を管理していた市職員が寝坊で遅刻し、投票開始が27分程度遅れました。
最終的に有権者1人が投票せずに帰ったそうです(1人は再度投票所に来て投票)。
投票箱の不具合
千葉市(千葉県)の事例
千葉市は、2019年7月21日の参院選で、投票箱の南京錠の鍵穴に鍵が入ったままねじれ、開かなくなってしまいました。
結局投票開始が10分程度遅れ、投票開始を待っていた20人のうち1人が帰ったそうです。
紀宝町(三重県)の事例
紀宝町は、2014年12月14日の衆院選で、投票箱の施錠方法が分からずに、投票開始が15分程度遅れたそうです。
投票用紙の誤交付
野洲市(滋賀県)の事例
野洲市は、2019年7月21日の参院選で、選挙区と比例代表の用紙を26人に間違えて交付してしまいました。
市職員が投票用紙を交付する機械に、選挙区用と比例代表用の用紙を入れ間違えたのが原因とのことです。
間違って投票された票は、公職選挙法の規定により無効となりました。
市の選管は後日、直接26人に謝罪したということです。
和泉市(大阪府)の事例
和泉市は、2016年7月10日の参院選で、選挙区と比例代表の用紙を53人(計92票)に間違えて交付してしまいました。
市職員が投票用紙を交付する機械に、選挙区用と比例代表用の用紙を入れ間違えたのが原因とのことです。
間違って投票された票は、公職選挙法の規定により無効となりました。
候補者の取り違え
富士宮市(静岡県)の事例
富士宮市は、2019年7月の参院選で、山田太郎氏の票を誤って山本太郎氏の票に算入してしまいました。
山田太郎氏の票が0票として公表され、それを見た市民から指摘や抗議が相次いだことにより発覚したそうです。
山田太郎氏の票の束を、山本太郎氏の票と一緒にまとめてしまったことが原因とのことです。
票数の操作
甲賀市(兵庫県)の事例
甲賀市は、2017年10月22日の衆院選で、投票者数と投票総数のつじつまを合わせるために、未使用の投票用紙400票を、白票として水増ししました。
さらに、翌23日に未集計の投票用紙が発見された際に、選管書記を含めた3人(総務部長、総務部次長、総務課長)が対応を協議し、その結果3人のうち1人が自宅に持ち帰り、焼却処分をしました。
対応に当たった3人の職員はその後、1年間の自宅謹慎を経て、懲戒免職処分を受けました。
しかし、さらにその後、免職された元総務部次長は自宅待機の1年間に未払いだった給与(ボーナス含む)780万円の支払いを求め、市を提訴しました。
当時、市には自宅待機中に給与を支払わないという条例や規則が存在しなかったのです。
その結果、市から元次長に540万円を支払うことで和解しました。
なお、元課長も未払い給与の700万円の支払いを求めて提訴していますが、和解には至っていないようです。
千葉市(千葉県)の事例
千葉市は、2019年4月7日の千葉市議会議員選挙で、投票者数と投票総数のつじつまを合わせるために、意図的に白票を8票少なくカウントしました。
実際は、100票の束のうち1つが92票であったことによるミスだったのですが、選管事務局の担当者(主査)はそのことに気づかずに、不正な処理を行いました。
不正処理を行った職員はその後、停職1カ月の懲戒処分を受けました。
高松市(香川県)の事例
高松市では、2013年7月21日の参院選で、特定の候補者の票数を意図的に300票以上減らし、その分を白票を二重計上することで補填するという選挙史上最悪の事件が起こりました。
この事件は、「参議院選白票水増し事件」としてWikipediaにも掲載されています。
犯行に関わったのは、高松市選管の職員6人で、いずれも執行猶予付きの懲役刑を言い渡されており、市役所を懲戒免職となっています。
特定の候補者の当選を妨害するための意図的な犯行という点では前代未聞であり、選挙制度と民主主義の根幹を揺るがす大事件として扱われています。
他の白票水増しは、飽くまで票数のつじつまを合わせるための苦肉の策だったのに対し、最初から完全に意図して犯行をおこなっているのが恐ろしいところです。
仙台市の選挙ミス記録
仙台市は、2014年の衆院選以降すべての選挙でミスが発生しています。
調べられる範囲でまとめてみました。
2014年12月の衆院選
当時の選管職員3名が、票の数えミスをごまかすために白票を1千票近く水増ししました。
結果として、3人全員が懲戒免職処分を受けました。
2015年8月の仙台市議選
一度確定した投票率を修正したり、誤った得票数を中間発表したりしてしまいました。
また、投票用紙の二重交付や、県警のミスで特定の候補者が選挙カーを使えないという事態も発生しました。
2015年10月の宮城県議選
集計ミスにより、開票結果の確定が午前4時45分と大幅に遅れました。
2016年7月の参院選
選挙権のない男性に誤って投票用紙を交付してしまい、結果として有効票として扱われました。
また、期日前投票所に訪れた20代の女性に対して、選挙人名簿から抹消されたため投票できないと、誤って伝えてしまいました。
2017年7月の仙台市長選
泉区での集計ミスにより、開票結果の確定が午前1時5分と、予定していた22時台よりも遅れました。
2017年10月の衆院選・宮城県知事選
投票録への記入ミスをにより開票時間が大幅に遅れ(何と翌日の午前10時台)たり、不在者投票による票を全く別の自治体に送付したりしてしまいました。
誤って送られた票は、新宿区から仙台市あてに送られたものの、午前8時までに仙台市に到着せず、最終的に無効となってしまいました。
2019年7月の参院選
ある候補の票を別の候補の票として計上していたり、置き去り票をカウントしなかったりしたため、全国で最も開票結果の確定(午前7時19分)が遅くなりました。
2019年8月の仙台市議選
選挙ポスターの掲示板に印字ミスがあり、7番~12番の候補者の掲出場所がなく、13番~18番の掲出場所が2か所となってしまいました。
結果。候補者2人分のポスターが誤って掲出されてしまいました。
まとめ
ここで紹介したミスの事例は、あくまで氷山の一角のうち、ごく一部です。
開票については、やはり過労状態で作業に当たっているためか、通常では考えられない凡ミスも多いです。
投票事務のミスは、おそらく未経験者やアルバイトがしっかり作業手順を把握していなかったことに起因するものでしょう。
選挙には膨大な人員が必要な割には、事務に精通している人がごく一部なのがミスの原因と言えそうです。
これを解決することは極めて困難なので、今後も全国でミスは発生すると思われます。
ネット選挙とはいかないまでも、投票所で候補者のボタンを押せば電子的に票が加算されるシステムがあれば、少なくとも開票のミスはなくなるでしょう。
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